映画『国宝』を観ました。
これまで歌舞伎にはあまりご縁がなく、正直なところ、詳しいことはほとんど分かりません。
それでも、日本古来のエンターテインメントとして、400年以上にわたり今も受け継がれている歌舞伎の世界に、ぐっと興味を引かれました。
第49回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞など、最多10部門で最優秀賞を受賞した作品です。
受賞作品といこともあり、私に中でかなりハードルを上げて観始めましたが、それでも見事に作品の世界へ引き込まれました。
血筋か、それとも才能か
歌舞伎界では、血筋が大きな意味を持つ。
名門の御曹司として生まれた大垣俊介を演じるのは、横浜流星さん。
一方、任侠の一門に生まれ、父を亡くした後に歌舞伎の世界へ入る立花喜久雄を演じるのは、吉沢亮さんです。
血筋に恵まれた俊介と、才能を開花させていく喜久雄。
お互いが、自分にはないものを相手に感じて嫉妬しながらも、実力を認め合い、兄弟のように育っていく。
ストーリー的には、二人が単純に憎み合う関係にならなかったことが、私には救いでした。
もちろん、ずっと順調ではありません。
血筋、才能、家族、周囲の思惑。さまざまなしがらみに翻弄されながらも、二人は歌舞伎の世界で自分の道を探していく姿が印象的でした。
吉沢亮さんの喜久雄に引き込まれる
吉沢亮さんの演じる喜久雄は、とにかく美しい。
普段の吉沢亮さんとはまた違い、舞台に立った瞬間、目線や指先、立ち姿まで、女形の役者に見えてくるから不思議です。第49回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞も納得でした。

吉沢亮さんと横浜流星さんは、歌舞伎や日本舞踊の経験がほとんどない状態から、約1年半もの稽古を積み重ねて撮影に臨んだそうです。
私たちは完成した数時間の映画を観る立場ですが、その数時間を作り上げるために、演者さんやスタッフの方々は、想像もできないほどの時間を費やしています。一つの作品を世に送り出すための覚悟や努力を知ると、改めて頭が下がります。
原作者も3年間、歌舞伎の舞台裏へ
原作を書いたのは、吉田修一さん。吉田修一さん自身が、3年間にわたって歌舞伎の黒衣をまとい、楽屋や舞台裏に入った経験をもとに、この物語を書き上げたそうです。

華やかな舞台だけでなく、その裏にある厳しさ、嫉妬、孤独、執念。そこまで深く描かれているのは、実際の歌舞伎の世界に入り込んで取材したからこそなのでしょうね。
俳優さんだけでなく、原作者、監督、歌舞伎指導、衣装、美術など、たくさんの方が「納得できるものを作りたい」という思いで向き合った作品なのだと感じました。
田中泯さんの眼に宿る生命力
個人的に、特に印象に残ったのが、小野川万菊を演じた田中泯さんです。
田中泯さんは以前、ドラマ『モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-』で観て以来、気になっていた役者さん。
今回、また演技を観られて嬉しかったです。

物語の終盤、老いて死に近づいている歌舞伎役者を演じているはずなのに、田中泯さんの目からは、むしろ強い生命力があふれているように見えました。
眼力というのでしょうか。
静かにそこにいるだけなのに、目が離せない。
この方の眼には、いつも引き込まれます。
喜久雄の少年時代を演じた黒川想矢さん
もう一人、気になった役者さんがいました。
喜久雄の少年時代を演じた、黒川想矢さんです。
映画の序盤から、表情がとても豊かで印象に残りました。
父を目の前で失ったときの表情、歌舞伎の世界に触れたときの眼差し、喜久雄の中にある危うさや強さ。

言葉で多くを説明しなくても、表情だけで喜久雄の感情が伝わってくるようでした。
まだ若い俳優さんですが、これからどんな役を演じていくのか、気になる存在になりました✨
歌舞伎を知らなくても惹かれる映画
私は歌舞伎の演目や決まりごとを、ほとんど知りません。
それでも、舞台の美しさや役者の生き様、才能と血筋の間でもがく二人の姿には、十分引き込まれました。
歌舞伎の知識がなくても楽しめるし、この映画をきっかけに、実際の歌舞伎も一度観てみたいと思いました。
喜久雄が人生をかけて求め続けた「景色」。
そんな景色を、私も見てみたいです。




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